全ミステリ好き、いや全人類におすすめできる一冊。めちゃくちゃ面白かった。今まで読んだミステリ小説の中でトップ5入りは確定。2022年は白井智之の「名探偵のいけにえ」、夕木春央の「方舟」、呉勝弘の「爆弾」が御三家というような空気が漂っていました。
自分は「名探偵のいけにえ」しか読んでなくて、面白すぎます白井先生さすがです名探偵のいけにえが一番ですなんて思っていましたが、「方舟」のほうがより好みにぶっ刺さってました。びっくりです。ってことは「爆弾」もめちゃくちゃ面白いはずなので読まないといけないですね。
サークルのOB達と、彼らとは全く面識のない3人家族が地下に閉じ込められ、そこから脱出するには誰か一人が犠牲にならないといけないという極端な非日常の環境で、殺人事件が発生してしまうというのがざっくりとした粗筋です。
他の人を助けるための犠牲者が決められないので、犯人を見つけてその人に犠牲になってもらおうということで犯人探しが始まります。
クローズドサークルの状況下で殺人が起こり、探偵役がいて犯人探しが進んでいくという定番もいいところのような設定です。しかし、そこから脱出するには誰か一人が犠牲にならないといけないという設定が乗っかっていることで、犯人は誰だろう、動機は何なんだろう、などというミステリの醍醐味に加えて、犯人が見つかってからどのように話が進むのだろうという点でも惹きつけられてしまいます。
ミステリとしての解決に至る過程も当然面白いのですが、何といってもエピローグがすさまじい。叙述トリックは一切使っていないにもかかわらず、世界が反転します。叙述トリックも好きなんですけど、叙述トリック以外でこれほどまでの破壊力を味わえるとは夢にも思っていませんでした。
伏線も丁寧に仕掛けられていて、すぐにでも2週目を読みたくなる作品です。（といってもほかに読みたい作品がいっぱいあるので2週目読まないんですけどね。でも2週目読みたいという気持ちは本当です。アンビバレントってこういうことを言うんですね。）
エピローグで作者の意地の悪さとサービス精神の旺盛さがふんだんに楽しめます。
この喜びを感じるためにミステリを読んでいると言っても過言ではないです。
情熱おすすめです。絶対に読んでください。
