「あんた嘘つきだねっ」
なんていうセリフが口癖である生粋のギャンブラーではなく、人の発言や行動を無意識のうちに客観的に分析する、まるで石持浅海の詳説に出てくる碓氷優佳のような女子高生が主人公の物語。
独自のゲームを設定してキャラクター同士が戦うギャンブル漫画は枚挙に暇がないが、そのような小説はなかなか珍しい。しかも主人公が女子高生であり、生死を賭けた一世一代の戦いというわけではなく、お金の動きも3話から出てくるものの、あまりハラハラ感はない。日常の謎ならぬ、日常のギャンブルといった趣の一風変わったギャンブル小説である。
全てのゲームがオリジナリティがあって面白いし、正当な心理戦からなんでもありのイカサマバトルまで幅広いシチュエーションで読者を楽しませてくれる。なかでも「自由律ジャンケン」は特にシンプルでありながらオリジナリティが高く、先の読めない展開で本当に面白かった。
著者の本業はミステリであるだけあって、一つ一つの短編の中にさりげない伏線が仕込まれている。あからさまな布石も仕込まれているが、ゲームを攻略するためのヒントと思えば十分に楽しめる。
審判の言うことが絶対であったり、クライマックスとなる最終のゲームはポーカーがテーマとなった「フォールームポーカー」であったり、「自由律ジャンケン」に出てくる独自手のネーミングであったりと、随所に嘘喰いリスペクトが感じられる。久しぶりにエアポーカーを読み返したくなった。