失敗の科学 マシュー・サイド (著), 有枝 春 (翻訳)

失敗の科学 book report

一言で言うと、「失敗から学べ」という本。

その核となるメッセージを様々な成功例や「失敗例」を用いて解説している。
実際に失敗から学ぶにはどのような組織的構造が必要なのか、どういう組織は失敗から学べないのか、など、様々な視点から失敗から学ぶために必要な知識を与えてくれる。

ゆうとることは正しいと思うし、帯に書いてるように小説のように面白いものの、内容としては「まあそうやろうな~」と思うものが多かった。まあそうやろな~と思ってることを書籍で読んで、実践していくことに価値があると思うので、今まで以上にどんどん失敗してオープンループを形成していきたい。

とはいえ、まあそうやろな~だけでなく、なるほどそうか~な内容もあった。それが「量!量!量!」というタイトルの章の話。
量か質かについての実験で、被験者は陶芸作品を作るのだが、彼らは「量」が評価されると知らされていたグループと、「質」が評価されると知らされていたグループに分けられている。しかし、全作品中「質」が最も良い作品を出したのは「量」を重視したグループだったという結果に。

量のグループは試行錯誤を重ねて粘土の扱いうまくなっていった一方で、質のグループは頭で考えることに時間をかけすぎて上手くいかなかったのではという風に推察されている。 

なるほどそうか~と思った一方で、世界一流エンジニアの思考法にあった「試行錯誤は「悪」である」という章があったのを思い出した。

コーディングでエラーが発生し、試行錯誤した結果1日かけて解決できた。しかし思い付きでいろいろなパターンを試しただけなので時間がかかるうえに、何も新しい知識を学べていない。分析ツールの使い方がきちんとわかっていなくて最後の手段としてとっておいたが、分析ツールを使う道を選んでいれば当該エラーをすぐに解決できただけでなく、分析ツールの使い方を学ぶこともでき、今後汎用的にエラー解決に使えるようになっていた。思い付きによる試行錯誤は「悪」だと身をもって実感したという話。

完全に主張が対立していてビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律を思い出したが、今回はどちらが言ってることにも一理あるように思える。

何が違うのか考えてみたが、1つ言えると思ったのは学びの有無について。「量!量!量!」についてはおそらく被験者は陶芸について初心者であるため、どんな失敗でも学びにつながっていたのだと思う。一方、「試行錯誤は「悪」である」については、著者である牛尾氏は(自身ではそう言っていないが)一流のプログラマーであり、思い付きで策を乱打することから学べることがなかったのだと思う。

つまり、初心者にとっては考える前に手を動かす「量!量!量!」の試行錯誤が効率が良いが、プロにとってはとりあえず手を動かして得られる学びが減っており、「試行錯誤は「悪」である」となっているのではないだろうか。

このブログの文章も、プログラミングについても、残念ながら自分はまだ手を動かして学ぶ方が効率が良さそうなので、早く「試行錯誤は「悪」である」と言えるようになりたいものです。

タイトルとURLをコピーしました