小市民シリーズ完結作。
小鳩が交通事故に遭うところから今回の物語はスタートする。
入院中の小鳩が回想する中学3年生のころの話と現在の話が並行して物語が進んでいく。
主人公二人って中学も一緒っていう設定あったっけ?全然覚えてなかったけど同じ中学らしい。
中3パートのほうでは小山内と小鳩の馴れ初めや、小鳩が小市民を目指すようになったきっかけなどにも触れられていて、シリーズのファンにとっては必読と言っていい内容だと思う。これだけ待たされたファンが読まんわけないからわざわざ言う必要ないけど。
ミステリ的には2つの話が最終的に1つにまとまるという点で「犬はどこだ」を思い出した。本作はつながり方はわからないとしても絶対に相互にかかわってるだろうなという書き方なのでびっくり度は「犬はどこだ」のほうが高い。
ただその分複雑すぎてなくて、「まあそうやろうな~」というところと「なるほどそう来たか~」というところがあったり、伏線もそんなんあったっけ??となるような細かすぎて伝わらない伏線はあんまりなくて、でもあまりにバレバレでもないちょうどいい感じのものが多い。
ミステリとしても当然面白いが、それだけでなくて物語としても非常に面白い。これはどの米澤作品でもいえると思う。
特にシリーズものは好きになってしまうキャラクターがいっぱいいる。小市民の二人はもちろんとして、脇役がめっちゃいい味を出している。堂島健吾とかちょろっとしか出てないのに、めちゃくちゃ存在感がある。キャラが好きになっちゃうと他愛もない会話してるだけで楽しめてしまう。
自分は本読んでもすぐ内容忘れるタイプやけど、春季限定の「おいしいココアの作り方」とかめっちゃ覚えてる。これキャラクターの性格がミステリとも絡んでて日常の謎の傑作と思うのでこれだけでも読んでほしい。
しかしそうはいってもやはりこの本の肝は小山内。ラストで小山内らしい言い回しで小鳩に対して真剣な感情を吐露する部分があって、二人の今後の関係を動かす重要なやりとりがある。それはそれでグッとくるところがあるんやけど、「人をなんだと思ってるの?」から始まるじゃれ合いみたいな、ストーリ―上で全く必要のない、余分とも思えるシーンのほうが真髄という感じがする。「そんなの思ったに決まってるじゃん」がらしさ爆発してて声出して笑ってしまった。